【千葉県立農業大学校】獣害対策研修を受講しました

農業大学校のカリキュラムの一環で、1月21日から23日までの3日間で獣害対策研修を受講しました。

最近「ジビエ」(天然の野生鳥獣の食肉)というワードをよく耳にしますが、これとセットで鳥獣による農業被害が頻繁にニュースで取り上げられていますね。比較的東京に近い千葉県も例外ではなく、県内でも鳥獣による農業被害が年々増加しているそうです。

獣害といっても様々な動物が挙げられます。まず、年急速に勢力を拡大して特に問題となっているのがイノシシです。イノシシの他にも日本固有種のニホンジカや外来種のキョン、アライグマ、ハクビシンも問題になっており、その対策が急務となっているのですが、正しい手法での対策が進んでいないのが現状のようです。

今回の研修では正しい対策方法を身に付けるため、野生動物の特性についての基本知識に関する講義と、捕獲罠と電気柵の設置実習を行いました。

まず、ほとんどの野生動物に共通する特性が2つあります。1つ目は警戒心が強いこと。2つ目がすぐに学習することです。学習することによりエサの場所を覚えますので、一度被害に合うとまた同じ場所に現れます。また、1度掛かった罠には2度と掛かりません。ただし、一度電気柵等で痛い目に逢うとその場所には現れなくなります。同じ種類の動物でも個体によって学習していることが異なりますので、個体ごとに対策を考えなければなりません。

また、獣害は動物を捕獲することだけでは対策できません(数のコントロール)。農作物に防護柵等で守ること(被害のコントロール)や動物の棲み家や餌場を無くすこと(環境のコントロール)を組み合わせることで初めて有効な対策となります。ただ、これだけのことを個人の農家が1人で行うことは難しいため、地域の力で行っていく必要があると講師の方は仰っていました。

ここまでの話を聞いただけでも獣害対策ってめんどくさそうだなぁと思ってしまいました。獣がいなければこんなことする必要はないのに、かなりの労力をそこに割かなくてなりません。ただでさえ忙しい農家には本当に辛いことですよね。しかし農村集落にとっては死活問題ですので、それでも対策していかなければならないのでしょうが・・・。

さて、講義の後は実習です。実際に学校の圃場に小型動物用の箱罠とカメラを設置して、実際に動物が来るかどうかをチェックします。学校の圃場は森林が隣接していますので、そこに住んでいるアライグマやタヌキ等の小動物を狙っていきます。

なお、実際に罠を仕掛けて獣を捕獲するためには狩猟免許(罠免許)が必要となります。このため、今回の実習では捕獲ができない模擬罠を使って実習を行いました。

これが今回使用するアライグマ用のワナです。アメリカ製のしっかりした作りの箱罠です。動物が箱の中の踏み板を踏むと入口の柵が閉まるようになっています。折り畳みもできて収納・持ち運びも便利です。ホームセンターに売っている罠の中には大きさ足りない欠陥罠もあるそうなので注意が必要です。

実習ではこの箱罠を研修生が4班に分かれて、それぞれの班で設置場所を考えて設置します。

私の班では圃場の中心あたりに動物の足跡を発見したので、足跡のあった圃場の近くに罠を仕掛けました。

これは別の場所で撮影した足跡ですが、動物が歩くとこのような足跡が付きます。足跡は移動経路やどのような動物がいるかを調べる判断材料にもなりますので要チェックです。ちなみにこれはたぶんタヌキの足跡だと思われます。

罠をしかける圃場はサツマイモの収穫後だったので、サツマイモのツルがありました。このツルを利用して箱罠をカモフラージュしてみました。


(サツマイモのツルでカモフラージュした箱罠)

そして罠のエサには有名なこのお菓子です。

なんとアライグマはキャラメルコーンが大好きだそうです。グルメですね(笑)。アライグマ被害が多い北米では、このキャラメルコーンをエサにしてアライグマを捕獲しているそうです。このため日本でもよくキャラメルコーンを利用するそうです。

あとは監視用のビデオカメラを設置します。

防水で生き物に反応して自動撮影ができます。また、夜間でも撮影することが可能です。実は私もこれ欲しいんですよね。うちの敷地の藪にワンカップの空き瓶を頻繁に投げ捨ててる輩がいるんですよね・・・。いつも掃除をしている時に犯人を見つけて文句を言いたいと思っていたのですが、これがあれば犯人を撮影することもできそうです(笑)。まぁ、そこまでするつもりは無いですが。

とりあえず完成です。二晩罠を設置して撮影結果を確認します。

いました。少し見づらいですが、画像の左端に動物の姿が映っています。おそらくタヌキです。箱罠を怪しんでいるようで、周りをグルグル回っています。結局箱の周りに置いておいた撒き餌のキャラメルコーンだけ食べて罠には入らずに去っていってしまいました。ひょっとしたら過去に箱罠にかかったことのある学習済の個体だったのかもしれませんね。

罠には入らなかったので残念でしたが、本当に動物が現れたのでビックリしました。昼間は人間が出入りしている場所ですが、夜になると動物たちの空間になっているのですね。不思議な感覚です。

今回の研修では獣害対策を実際に色々やってみましたが、最後に思ったことは、新規就農であればわざわざ獣害が発生するような場所で就農しない方が良いのかなぁと思ってしまいました。こんな事を言ってしまってはいけないかと思いますが、ただでさえ忙しいのにこんなことまでやっていたら正直手がいくらあっても足りないと思います。獣害をきっかけに離農していく高齢の農業従事者が多いことも納得できます。

新規就農であれば、獣害が無い=リスクが低い場所で就農することも一つの選択肢だと思います。ただし、獣害と正面から向き合って積極的に対策を行い更にはジビエ活用までしている素晴らしい地域もありますので、獣害を理由にその地域を就農地候補から切り捨ててしまうことは早計だとも思います。難しい問題ですね。

今回研修を通じて今まであまり考えたことのなかった獣害について考えるきっかけとなりました。私が就農を予定している柏市は獣害が比較的少ないですが、将来的には増加することも考えられますので、今後の獣害動向を注視していきたいと思います。